「やってみなはれの極意【その<24>】」~フォロワーシップの重要性について考える~

*このメールマガジンは、私・神田と直接名刺交換させて頂いた方々に送信させて頂いております。(今後、送信不要の方につきましては、最後にある送信停止の手続きを行って頂くよう、宜しくお願いいたします。)

「やってみなはれの極意【その<24>】」~フォロワーシップの重要性について考える昨年の一年間は、「やってみなはれの極意」を22回ほど発信させて頂き、主に私がサントリーでの仕事を通じて経験したこと、うまくいったこと、失敗したこと、感じたことなどを、サントリーの「やってみなはれ」の創業者精神に照らし合わせながら、面白おかしく伝えさせて頂きました。今年2回目となる今回からは、主に私の専門分野(株式会社チームフォースの事業内容)である「人に活力、組織に成果を」というテーマにフォーカスした内容にシフトさせて頂こうと思っています。ということで今回のテーマは「フォロワーシップ」について、その意味合いと構造、リーダーシップとの関係性、私自身のフォロワーシップに関する反省、およびチームパフォーマンスとの関連性などについて少しばかりお話させて頂きたいと考えています。まず初めに、なせ私が「フォロワーシップ」についてお話させていただくのかについて少し触れさせて頂きたいと考えています。

私は4年前より、サントリー関連会社・岩の原葡萄園の代表を務める傍らで、サントリーグループの管理職層に対して、人事本部が主催する応募型研修・「結果の出る強いリーダー育成講座(2時間半×5回シリーズ)」を実施させてもらっています。手前味噌にはなりますが、おかげさまでこの講座はサントリーの数ある応募型研修の中でも、非常に「満足度(事後アンケートによる)」が高く、過去の平均スコアも5.0満点中、4.7~4.8と非常に高く好評を博するる人気の講座となっています。この講座の最大の特徴は、各回の講座が終わるごとに、毎回全受講者に対して45分の「フォローアップコーチング」を実施し、各回学んだテーマについて、自分事としての気づきや行動変革を促すことを目的として、コーチングセッションを行いながら、受講者の成長支援をめざして真剣に取り組んできました。そして、今までに100名以上のサントリーグループの社員と、コーチングセッションを行っている中で痛切に感じているのは、いまのマネージャーや管理職が非常に厳しい環境に置かれているということです。

先の読めない現在のビジネス環境下においては、管理職に求められる業務は多岐にわたっており、かつ複雑化・高度化しています。特に課長職は、数人の部下を抱え、課全体にに与えられたミッションの遂行に向けて、メンバーの日々の仕事の進捗を確認したり、仕事上の悩みの相談乗ったりする中で、人によっては自らもプレイングマネージャーとして独自の業務を進めなければならず、また多様な価値観を持つメンバーと個々のコミュニケーションをうまく取りながら、多忙な業務をこなしていかなければなりません。特に昔と違うのは、部下の成長を促すために、かなりの労力を使わなければならないことです。ある部署のマネージャーの例をあげれば、部下が5名いるうち、20代の女子と新入社員の男子、そして自分より10歳前後年上の社員が3名と、全く世代も性別も全く異なるメンバーを抱えている状況で、経験の少ない若手社員の成長を意識しつつ、一方では年上の先輩社員のモチベーションを下げないように気配りを働かせなければなりません。いずれにしても私のように上から被せる旧態依然とした「統率型リーダーシップ」では全く歯が立たない状況にあるといえます。まさに「リーダー受難の時代の到来」と言えるのではないでしょうか?

このように、マネージャー層が日々部下のマネジメントに悪戦苦闘する中、一方の部下の方はというと、さほど上司の苦労などどこ吹く風で、勝手気ままに仕事を進めているメンバーが少なからず存在していることも事実です。上司が少しでも甘い顔を見せようものなら、「それは私の仕事ではありません」、「なぜそのような仕事の仕方の進め方をしなければならないのでしょうか?」などと、自分勝手で言いたい放題に振る舞う部下も見受けられます。全てとは言いませんが、たいていどこの会社組織も、【できる部下20%】:【普通の部下60%】:【困った部下20%】といった比率になっているのではないでしょうか?【困った部下20%】に関しては、上司だけの力で成長を促すことは非常に難しいため、やれることは、【普通の部下60%ニ対して、少しでも多くの人数の部下に「フォロワーシップ」を身に着けさせるかが、その会社の人的生産性を上げる上で、大きな成否の分かれ道になってくると思います。つまり、リーダーだけの力では、チームを活性化させ与えられたミッションを完遂するには限界があり、いかにしてリーダーは部下に「フォロワーシップ「」を身に着けてもらうかが重要になってくるということです。

一方、そのような【困った部下20%】側にとっても、上司に迎合せず、常にネガティブな態度を取り続けることは本人にとっても好ましいこととは思えません。なぜなら、部下の評価というものは上司が決め、その蓄積がその部下のサラリーマン人生を大きく左右することになるからです。だからと言ってすべてがすべて上司に迎合する必要もなく、まずは上司やそのチームが目指す共通の目標に向かってお互いに協力し合える関係を築くことが必要になります。そのことに気づいていない部下に「フォロワーシップ」の重要性に気づかせるだけでも、その上司と部下の関係は大きく変わるのではないかと思っています。まさに部下の上司に対する「フォロワーシップ」とは、“チームの目標達成に向けて「自律的かつ主体的にリーダーや他メンバーに働きかけ支援する資質・技量“と言えるでしょう。これを分かりやすく別な言い方に変えれば「できる部下力」であり、上司に対してサポートしながら組織に影響力を与え、しばしば、チームのために耳の痛いことも伝えているのに信頼され、周囲から認められ評価される存在となる力と言えるでしよう。

私がここまで上司に対する部下の「フォロワーシップ」にこだわるのは、実は私自身、微塵も「フォロワーシップ」の「フ」の字も意識することがなかった人間であったと今さらながら反省しているからなのです。いや、それどころか、ウマ合わない上司に対しては、敵対的感情を露わにし、思っていることをそのまま口にする生意気で我儘な部下だったと思っています。洋酒事業部・ウイスキー商品開発担当だった時代に、部長から仕事上のミスを「神田、お前はどうもスタッフの仕事が不向きなようだな・・・」と指摘された際に、感情的になってしまって思わず、「であれば得意とする営業に出せば良いじゃないですか!」と私が噛みついた次の異動で、(営業ではない)首都圏企画部に異動することになったり、福岡支店長時代、私のやることなすこと否定してきた上司である九州支社長と約1年半に2回しか会話を交わすことなく、険悪なムードが続いたのち、全社で一番厳しい部署に異動になったりと、私自身の仕事に対するフォロワーシップの意識が大きく欠如していたことは否めません。もし、私が今のように冷静に「フォローワーシップ」の必要性と重要性を充分に認識していたとしたら、私のキャリアルートも大きく違っていたのではないかと考えているからです。まさしく私は、「フォロワーシップ」に関する「しくじり先生」と胸を張って言えるのではないかと思っています。まあ、いまさらそんなことを悔いても仕方がありませんので、せめて自分の後輩達には、この「フォロワーシップ」を身に着けることの大切さを知ってもらいたくて、私はサントリーの人財戦略本部に4年前から実施していた「リーダーシップ講座」と同じ建付けで「フォロワーシップ講座」の実施を提案し、一昨年の秋から実施となりました。この講座の第一回目の開始に当たっては、サントリーグループ内において「リーダシップ講座」の応募の2倍ほどの応募があり、メンバー層にとっても、チーム内に置いて自身の「フォロワーシップ」を身に着けることの重要性についてはかなり感度が高かったように感じています。実はこの部下から上司に対する「フォロワーシップ」に関して書かれた書籍や論評は少なく、メンバー層からみてこの「フォローワーシップ」というテーマは思いのほか新鮮に感じられたようです。では、部下から見た上司への「フォロワーシップ」とはどのようなものかということについて、私が「フォロワーシップ講座」で話している内容を少しだけここで紹介することにします。

前述した通り、「フォロワーシップ」とは、“チームの目標達成に向けて自律的かつ主体的にリーダーや他メンバーに働きかけ支援する資質・技量」“を意味しています。ここでのポイントは、①チームの目標達成をゴールとしていること、②あくまでも指示されてやるのではなく、自立的かつ主体的な動きであること、③リーダーだけではなく、他のメンバーへの働きかけをも行うものであるということです。まずはこの言葉の本質を押さえた上で、続けて「フォロワーシップ」を構成する基本3要素について説明します。この基本3要素を公式として当てはめると、「貢献性」×「提言力」=「チームパフォーマンス」という形になります。「フォロワーシップ」の目的はあくまで「チームパフォーマンス(チームの成果)」を向上させる活動の一環であり、上司であるリーダーやチームメンバーへの「貢献性」を発揮することがその土台となっています。そしてその「貢献性」を土台として、上司との信頼関係を築くことで、時にはリーダーやチームが誤った方向に進もうといする時に、敢えて耳の痛い意見が言える「提言力」が必要になってきます。

これを分かりやすく図に表すと、縦軸を貢献性の大小、横軸を提言力の強弱として「フォロワーシップ」のポジショニングが4象限で表すことができます(下記の図を参照下さい)。①貢献性が高く提言力も強い(右上)⇒これは理想的な「協働者」としての「フォロワーシップ」の姿だといえます。②貢献性は高いが、提言力が弱い⇒これは、自分の意見をなるべく抑えて貢献性に徹する「従属者」的傾向があります。③提言力は強いが、貢献性が低い(右下)⇒これはどちらかというと、自身の意見ばばかりが目立つ「評論家」と言えるでしょう。最後の➃は貢献性が低く、提言力も低い⇒これは仕事のすべてに消極的な「傍観者」と言えるのではないかと思います。いずれにしてもリーダーやチームにとっての良き「フォロワー」とは、その場その場に応じてバランス良く柔軟に、「貢献性」と「提言力」をしっかりと発揮できる行動力のある人と言えます。また、「提言力」はそのチームやリーダーに対する「影響力」と言い換えることもできますので、提言の強弱は別にして、リーダーやメンバーにどの程度自身の考えや意見を受け入れてもらえるかという観点からも理解していただければと思っています。

このフォロワーシップの本質を理解してもらった上で、最後にリーダーにおける「フォロワーシップ」の重要性についても触れさせてもらいたいと思っています。この論点については私は大きく分けると2つあるのではないかと考えています。ひとつは、日本のような階層型組織においては、「どんなリーダー(上司)でも、必ず誰かの部下である」ということです。メンバーの上司である課長の上司は部長であり、その部長の上司もまた本部長(役員など)であるということです。ですから広い意味で考えるなら、「フォロワーシップ」は上司および彼らが率いるチームにとっては必ず必要なものであるということです。つまり部下にいい仕事をさせるためには、上司の上司に対して有能な「フォロワーシップ」を発揮していかなければ、自身を率いるチームに対しても良い影響を与えることができないということです。二つ目は、いわゆる部下に対する「フォロワーシップ」です。リーダーは常に強い意志とゆるぎない求心力でメンバーを引っ張るだけでなく、困った時に相談に乗ったり、苦手な業務をうまく教えたりすることによって、メンバーをうまくサポートし、その弱点をうまくカバーすることで、部下からの信頼を得て、上司やチームへの忠誠心(エンゲージメント)を高めることができるのです。まさに「フォロワーシップ」は今のビジネスパーソンである誰もが身に着けるへき資質であり能力であるといえるでしょう。

「フォロワーシップ」とは、単に上司の指示に従うことではなく、自らの役割を理解し、チームの目標達成に向けて主体的に行動することを意味します。それは、リーダーに対して盲目的に追従するのではなく、時には苦言を呈したり、時には支えながら組織の成長にひた向きに貢献する姿勢です。サントリーが長年培ってきた「やってみなはれ」の企業文化の根底にもこのような、明るく前向きな「協働の精神」があります。これは、上司と部下の関係においても当てはまり、上司が一方的に指導するのではなく、部下が自由闊達に「フォロワーシップ」を発揮し、互いに認め合い高め合う関係性を築くことが求められます。サントリーが過去に幾多の困難を乗り越えて現在に至っているのも、単なるトップダウンの指示ではなく、現場の社員が「やってみなはれ」の精神をもって主体的に「フォロワーシップ」を発揮し、挑戦し続けた結果であると考えています。

例えば、ウイスキー事業の発展においても、角ハイポールの大ヒットに見られるように、単に経営陣の方針だけでなく、現場の社員が自ら考え、試行錯誤しながら品質向上に努めたことが成功の鍵になっていますし、また他の事業における新しい市場開拓においても、営業担当者や商品開発者が主体的に動き、現場からのフィードバックを積極的に取り入れることで、より良い製品やサービスを生みだしてきたのです。リーダーが方針を示し、それに共感した「フォロワー」が主体的に動く。このより良き相互作用がうまく回ってきたからこそ、サントリーは常に革新を続けることができたのです。今後、組織の持続的な成長を支えるためには、一人ひとりが自らの役割を理解し、積極的に関与する姿勢がますます求められます。リーダーが方向性を示し、それに共感した「フォロワー」が自ら考え、行動する。この相互作用こそが、サントリーが革新を続ける原動力であり、企業の持続的成長を支えている源となっているのである。

 

神田 和明

神田 和明

結果の出る強い組織づくりコンサルタント

株式会社チームフォース代表
中小企業の経営者に、コンサルティングとコーチングのハイブリッド型ソリューションで「結果の出る強い組織づくり」のサポートを行い、「活力」と「成果」をお届けしています
中小企業診断士/【BCS認定】プロフエッショナルビジネスコーチ/宅地建物取引士

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