「やってみなはれの極意【その⑱】」~苦しい時こそ「ヘッズ・アップ!」の精神を忘れずに ~

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「やってみなはれの極意【その⑱】」~苦しい時こそ「ヘッズ・アップ!」の精神を忘れずに ~

私の現在の楽しみの一つにラグビー観戦があります。自身の出身の地である北海道では、ラグビーというスポーツはあまり盛んではなかったこともあり、学生時代までは、ラグビーには全くと言ってよいほど興味がありませんでした。サントリーに入社後、自社のラグビーチームであるサントリーサンゴリアスの試合をちょくちょく観戦しているうちに、いまではすっかりラグビーというスポーツの虜になっています。皆さんもご存じの通り、ラグビーワールドカップ2019年・日本大会で、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチ率いる日本代表チームが初のベスト8に進出し、その力を世界に見せつけたことで「にわかラグビーファン」が大幅に増え、ラグビーというスポーツが日本国内で脚光を浴びるきっかけとなったのはまだ記憶に新しいとこだと思います。

では、ラクビーというスポーツが持つ独自の魅力とはどんなところにあるのでしょうか?一般的にラグビーのルールは複雑でわかりにくく、長年のファンであっても、そのルールを正確に把握している人はそう多くはないのではないかと思います。ラグビーの魅力は、ゲームにおける高度な戦略性やフィジカルなぶつかり合いである面、スポーツマンシップ、そしてチームワークの結集が勝利と密接に結びついている点が挙げられます。他のスポーツにはないこれらの要素がラグビーの魅力です。その内容をいくつかもう少し具体的にお話しすると以下のようになります。

1. 【フィジカルな激しさとダイナミズム】:ラグビーは、体力や力強さが求められるスポーツで、プレイヤー同士が激しくぶつかり合う場面が多く見られます。このフィジカルでタフな格闘技的要素が、スポーツとしての迫力やスリルを生み、観客を魅了します。

2. 【戦略性とチームワーク】:ラグビーは、ただ力任せにプレーするスポーツではありません。グラウンド全体を見渡し、相手チームの動きを予測しながら戦略的にプレーを進める必要があります。選手一人ひとりが自分の役割を果たし、チーム全体で連携を取ることが勝利につながるため、チームワークが非常に重要なポイントになります。

3. 【スポーツマンシップとフェアプレー】:ラグビーは「ノーサイド精神」という考え方が浸透しており、試合終了後には勝敗を超えて両チームが敬意を持って互いを称え合います。激しい接触がある一方で、伝統やルールを守り、フェアプレーを重んじる崇高なスポーツマンシップが強調されている点が大きな魅力です。

4. 【個々の成長と精神的な挑戦】:ラグビーは、個々の選手に対して高い精神的・肉体的な挑戦を課します。プレッシャーの中で状況を冷静に判断し、相手の猛攻を耐え抜く力が求められ、プレイヤーはその中で自分を成長させていきます。これらの要素が組み合わさり、ラグビーは見る者にも、プレイする者にも強い魅力を感じさせるスポーツとなっています。

サントリーのラグビー部は、約40数年前の1970年頃に、サントリーラグビー部の前身となるラグビー同好会が発足し、1980年に正式にサントリーラグビー部として創設されました。過去にも少し触れましたが、私が入社した1983年同期入社のラガーマンは、当時、早稲田大学のスターであった本城和彦・吉野俊郎および梶原敏補、そして明治大学からは第58回高校全国大会で国学院久我山高の一員として全国優勝した村松研二郎の4人がいます。なお、その2年後に入社した同志社大学出身の土田正人は、サントリーHD常務執行役員をしながら、現在日本ラグビー協会の理事長を務めています。この頃からサントリーは大学ラグビーで活躍したの多くのスター選手を採用し始めたのですが、サントリーが全国社会人ラグビー選手権を勝ち抜いて日本選手権で初優勝したのは、なんと創部から15年が過ぎた1995年で、いまのラグビーリーグワンで常に優勝を狙えるまでになるには、相当に長い年月がかかっています。

サントリーがラグビーチームに力を入れている理由は、このようなラグビーの持つスポーツとしての総合的な魅力が、サントリーの目指す企業イメージと重なっていることにあります。チームワーク、フェアプレー、誠実さといった価値観は、ラグビーチームを通じてサントリーのブランドイメージを強化し、社会的な信頼を高める効果を期待できます。さらには、ラグビーチームを運営することで、社員同士の交流や一体感を深める機会が提供され、チームワークや規律を重んじるラグビーの特性は、社員育成にもつながり、企業文化の醸成に寄与します。社会貢献と地域活性化は、スポーツを通じて地域や社会に貢献することも目的の一つで、子供や若者へのスポーツ振興活動を行い、地域社会とのつながりを深めることを重視しています。国際的な視野という観点からは、ラグビーは国際的に人気があり、特にワールドカップなどでの活躍は世界中で注目されるため、グローバルなブランド展開をさらに進め、国際市場でのプレゼンスを強化することにもつながります。これらの理由により、サントリーはラグビーチームへの投資と支援を続け、長きにわたってスポーツを通じた企業活動の一環としてチーム強化に努めているのです。

サントリーで働く社員が、社業とラグビー(特にサントリーサンゴリアスの選手としての活動)を同時に行うことを「ラ業両立」と呼びます。この両立は、社員がスポーツのパフォーマンスを保ちながら、実際の会社の業務でも成果を上げることを目指すもので、特にサントリーのラグビー選手にとって重要な意義を持っています。サントリーのラグビー部に所属する選手(プロ契約以外の)たちは、シーズン中も朝早くから練習を行い、午後は営業や企業内での業務に従事します。このような「ラ業両立」の仕組みは、ラグビー選手としてのスキルだけでなく、営業活動やそれぞれの事業推進などの企業活動においても高い能力を発揮するための強力なモチベーションになっています​。このように、サントリーは社員が仕事とラグビーを両立できる環境を整えており、それによって社員の団結や会社全体の一体感の強化を目指しています。

この「ラ業両立」を愚直に実践していた選手社員の中の一人に、かつて日本ラグビーの歴史を変えた2015年のワールドカップ、南アフリカ戦で勝利の瞬間にピッチに立っていた15人のひとりで、2019年に現役を引退し現在でもサントリーのスポーツ推進部に籍をおく真壁伸弥選手がいます。日ごろはサントリーの営業マンとして働きつつ、ラグビー選手としても高いパフォーマンスを維持し、日本代表の活動にも参加していることが知られていました。彼は押しも押されもせぬ日本のトップ選手でありながらも、サントリーの営業マンの顔も持つていました。サンゴリアスに限らず社員からプロ契約に切り替える選手も増えている中、サントリーの社員として、主にスーパーや量販店への営業を担当する部署に身を置きながらラグビーを続けていました。多忙を極める中でも彼が行っている「流通向けの啓発的活動」のひとつが、自身が講師となって開くウイスキーセミナーです。同部署の営業マンがスーパーなどの得意先に「ラグビー選手によるセミナーをやりませんか?」と働きかけ、決まれば真壁が自身のブログやSNSで告知して集客に勤しみ、そして集まった一般客や得意先に向けて、ラグビーで培った自身の経験談を交えながら、ウイスキーエキスパートとしてその魅力や雑学を直に熱く伝えるというイベントです。

彼はウイスキー文化研究所認定の資格「ウイスキーエキスパート」も取得するなどお酒への愛は人一倍で、シーズンのオン/オフを問わず精力的に社業に取り組んでいました。所属していた首都圏支社広域営業3部にはサンゴリアスのメンバーが数多く在籍しており、彼らとともに社業とラグビーの両立のためのスローガンを作成した。「ラグビーもしっかりやりつつ業務でも日本一を目指す。そんな狙いで、ラグビーの『ラ』と業務の『業』を取って『ラ業両立』という言葉を掲げていました。それを遂行することで間接的に一般の社員をインスパイアできるよう活動に注力しています。「周りの社員たちが我々をサポートしてくれ、そのサポートがあるから仕事もラグビーも頑張れる。それがなければ優勝どころか、ラグビー自体できていなかったでしょう」と真壁選手は語っています。2年前に私が社長を務めていた岩の原ワインのイベントで一度彼とお会いしたことがありますが、気さくで親しみやすく礼儀正しい好青年だという強い印象がいまだに残っています。

サントリーがラグビーに力を入れているのには、現オーナーである佐治信忠氏がラグビーをこよなく愛していることも大きな要因です。今思い返せば、サントリーが社を挙げてサンゴリアスをサポートしていることが如実に表れていた瞬間があります。前出した真壁選手がキャプテンを務めていたサンゴリアスがトップリーグ優勝を決めた、2017年1月14日(神戸製鋼戦)と日本選手権優勝を飾った1月29日(パナソニック戦)の試合後のこと。突然、佐治会長が屈強なフィフティーンによって高々と胴上げされたのです。それは儀礼的なものではなく、熱烈なラグビーファンである佐治会長にチーム全員が感謝を捧げるかのような美しく誇り高い胴上げでした。日頃からラグビーチームに最大限の支援を行い、彼らを優しく見守りながらも、時には激しく叱咤激励する、まさに佐治会長のサントリーラグビーチームに対する深い思い入れと愛着が結実した感動すべき瞬間を私は見たような気がしました。まさにオーナー企業であるサントリーならではの光景だったと思います。

もうひとつ、ラグビーに熱を入れている佐治会長の面白いエピソードがあります。昨年の11月に亡くなった作家の伊集院静氏と佐治会長とは、出会った最初から馬が合い、気心の知れた友人同士という関係を超えて、お互い血を分けた兄弟のような、特別な絆を感じていた朋友でした。伊集院氏が一度だけサントリーのラグビーチームの試合観戦を佐治会長とご一緒した際に、思わず熱くなりすぎて、わき目も振らずに大声で応援する佐治会長の姿を見て、「仕事に関しては”平成の名将”とさえ呼ばれている人物が、ことラグビーに関しては、”品性”を自宅に置いて出てくるのか」と、伊集院氏に『週刊現代』のエッセー「男たちの流儀」で、書かれてしまったと伊集院氏への追悼の言葉の中で語られていました。

ラグビーにおいてしばしば用いられる言葉に「ヘッズアップ(HEADS UP)」という言葉があります。この言葉の本来の意味は、選手がプレー中に頭を上げて周囲の状況を把握し、適切な判断を下すことを指しています。具体的には、ボールを持っている選手がディフェンスの配置や味方の位置を確認しながらプレーを進めることが重要です。これにより、より効果的なパスやランニングラインを選択でき、チーム全体のパフォーマンスが向上します。「ヘッズアップ」は、単に頭を上げるだけでなく、視野を広く持ち、状況を的確に判断する能力を養うことを意味します。これにより、プレーの選択肢が増え、相手チームのディフェンスを突破しやすくなります。

しかし元ラガーマンだった上司から私が聞いた話では、サントリーの社内でこの言葉が使われる場合は、ちよっと意味合いが違うということなのです。前述した通り、ラグビーというスポーツは、常に肉体と肉体とが激しくぶつかり合う心と身体の格闘技です。雌雄を決する後半になって体力の消耗が最高潮に達した時、この「ヘッズ・アップ」という言葉でお互いにメンバー同士で励まし合うのだそうです。厳しいプレーの連続で、自分たちが苦しく辛い時、あえて無理してでも敢えて堂々と頭を上げて、臆することなく相手の状況をしっかりと見つめようという意味が込められています。ゲームが伸るか反るかの接戦となり、自分たちがつらく極限状態にあるときは、おそらく相手も同じように辛く苦しい状況にあるはずで、そんな時に頭を上げずに下を向いていたら、相手が「あいつらは相当、疲弊・消耗している、相手を倒す絶好のチヤンスだ」と勢いを盛り返してくる可能性があります。だから、真に辛く苦しい時にこそ、「ヘッズ・アップ」という言葉を皆で繰り返すことで、気合を入れ直し、歯を食いしばって相手に立ち向かっていこうという気概が込められている言葉なのです。

サントリーは創業以来、幾多の困難を乗り越えてきました。創業者である鳥井信治郎が日本では前人未到のウイスキー事業に進出し、当初は全く日本人の味覚になじまず苦杯を舐めたこと、二代目の佐治敬三氏が満を持して参入したビール事業が、競合他社の厚い壁に阻まれて約40年以上も赤字を垂れ流し続けたこと、そしてその後、全盛を極めたウイスキー事業が焼酎の大幅な台頭によって。その大きなマーケットを奪われたことなど、数々の苦労を重ねてきたのです。そのような幾多の困難を乗り越えられたのは、どのような状況におかれた時においても、明るく、前向きにサントリーが掲げる「大きな夢」を追い続けることを忘れなかったからではないかと思っています。夢を持たない会社には、変化も障害も、そして未来もありません。大きな夢が困難の克服への大きな原動力となっているのです。

サントリーは、2030年ビジョンに「世界で最も信頼され、愛される、オンリーワンの食品酒類総合企業」となることを掲げています。この大きな夢を実現するためには、現在の厳しい経営環境を打破する強い「変わる勇気」と「変える力」が不可欠です。そして逆境の時にこそ、1人1人が大きな夢を描き、その実現に向かって恐れずに「ヘッズ・アップ」の精神で頭を上げて前を向き「へこたれず、あきらめず、しつこく」力強く歩みを進める。それこそがサントリーに脈々と受け継がれてきた「やってみなはれ」のDNAなのではないかと私は思っています。最後になりますが、、改めて私を含めた皆さん一人一人が、大きな夢を持つこと、そして「変わる勇気」と「変える力」の大切さを心に刻んで、苦しい時にこそ「ヘッズアップ」の精神を忘れずに最善を尽くすことで、人生最後の日を迎える際に、「すべてをやり切った、良き人生だった」といえるよう、残された人生を、皆さんと共に走り抜きたいと思っています。

※以下、ビジネスコーチ社が主宰するセミナーへのご案になります。ご興味のある方はぜひ参加下さい 

~ リーダー受難の時代を乗り切る最後の切り札 ~

「フォロワーシップの本質について考える」

2024年11月14日(木)13:00 ~ 15:00
2024年12月10日(火)15:00 ~ 17:00

お申込みはこちらから☞『フォロワーシップの本質について考える』 – ビジネスコーチ株式会社 (businesscoach.co.jp)

 

神田 和明

神田 和明

結果の出る強い組織づくりコンサルタント

株式会社チームフォース代表
中小企業の経営者に、コンサルティングとコーチングのハイブリッド型ソリューションで「結果の出る強い組織づくり」のサポートを行い、「活力」と「成果」をお届けしています
中小企業診断士/【BCS認定】プロフエッショナルビジネスコーチ/宅地建物取引士

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