「やってみなはれの極意【その⑰】」~フォロワーシップにおける「提言力」の重要性~  

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「やってみなはれの極意【その⑰】」~フォロワーシップにおける「提言力」の重要性~

私は昨年の4月より、サントリー(株)の人財戦略部で、マネージャー・メンバー層への成長支援、そして社内の各部署の組織風土醸成のマネジメント推進の仕事に携わっています。この仕事は、現在の私の副業であるコンサルタント会社・(株)チームフォースの仕事との相乗効果を発揮させることを目的として、私が会社に無理をお願いして実現したものです。そのような私の仕事の役割の中でも一番社内から注目され、評価を受けている仕事は、メンバー層を対象に年2回実施させて頂いている、「フォロワーシップ講座」という応募型研修の講師です。これは月に1回、4カ月にわたって計4回、150分の講座が行われ、各回が終了するごとに受講者全員に対して、各回ごとのテーマに基づいた45分間のフォローアップコーチングを行っています。そのテーマとしては、第1講:「フォロワーシップ」、第2講:「貢献性」、第3講:「提言力」、第4講:「チームパフォーマンス」という内容になっています。

この講座への応募人数は毎回、受講応募者が多く、第1期生、第2期生共に定員の倍を超える応募があり、サントリーのメンバー層のフォロワーシップに対する意識・興味の高さが伺えます。よく考えてみると、一般的に「リーダーシップ」というテーマに関しては、それに関する関連著書も数多く存在し、経営者や管理職にとっては「お馴染みの定番」となっている感がありますが、一方「フォロワーシップ」に関しては、言葉は聞いたことがあるものの、その意味合いや必要性について書かれた著書は意外と少なく、あったとしてもそれは、常にリーダー側からみた、リーダーシップの一つのタイブとしての「フォロワーシップ型リーダー」といった類のものが大半です。

私が実施している「フォロワーシッブ講座」の主な狙いは、部下のフォロワーシップ、つまり、リーダーをサポートする優秀なフォロワーの育成ということに主眼を置いています。今のように時代の変化が激しく、社内における世代間のミスマッチが大きくなっている現在では、リーダー単独の力だけでは、組織に与えられた目標を達成することは難しく、それをサポートする部下やメンバーの効果的なフォロワーシップが不可欠です。私は3年ほど前から、マネージャー層に対して「リーダーシップをいかに効果的に発揮するか」をテーマに「リーダーシップ講座【全5回】」を実施していたのですが、その研修の回数を重ねれば重ねるほど、マネージャーを支えるメンバー層のフォロワーシップの重要性を痛感し、これからはメンバー層のフォロワーシップを強化していくことが、リーダーシップの機能をより発揮させ、チームの成果に大きな影響を与えるということを知ることになったからです。

では(部下からみた)、「フォロワーシップ」とは何でしょうか?それは「チームの目標達成に向けて、自律的かつ主体的にリーダーや他メンバーに働きかけ支援する資質・技量」です。そしてそれをもう少し詳しくブレークダウンすると、自分が属するチーム内で「貢献性」と「提言力」を遺憾なく発揮することで、チームの成果「チームパフォーマンス」に貢献することと私は定義づけています。つまり、リーダーや上司に対して、彼らが求めていることをしっかり実行・実現するだけではなく、時には「こうしたらもっと良くなる、ここはちよっと違うのではないか」といった、やや耳の痛いことを言うこともフォロワーシップの重要な要素であることを伝えています。つまり、単に上の言うことを言われたまま実行するだけでは、単なるイエスマンになってしまいますし、逆にやることをやらずに、文句ばかり言っているようでは、行動の伴わない評論家と言われかねません。つまり、フォロワーシップの本質とは、チームの目標達成に向けて、リーダーや上司が求めていることをしっかりと把握し、それを実行・サポートしつつも、意見の違いや、チームをより良い状況にするためにしっかりと意見・提言するという二つの行動の両輪をバランスよく回すことといえるでしょう。

長々と、フォロワーシップについての話をさせて頂いたのは、このフォロワーシップの両輪の一つである、「提言力」の重要性に関する内容を今回のテーマとさせて頂きたかったからです。私もサントリーで色々な部署で多くの上司に仕えてきましたが、いま思えば私自身のフォロワーシップを振り返ってみると、それはまあ、いびつなもので、上司の意向や考えを全く顧みずに、独断専行で自分が良いと思ったことをひたすら実行する、とてもフォローシップの体をなさない部下だったと思っています。こんな私が「フォロワーシップ」について後輩に教えているのが恥ずかしくなってきますが、実はのフォロワーシップにおける「提言力」は企業や組織の成長において非常に重要な要素なのです。フォロワーシップ講座の受講生に自身のフォロワーシップに関するタイプを聞いてみても、大半は、「貢献性」はしっかり発揮できているものの、「提言力」については、ほとんどの受講生が不十分であると答えているのです。

あらためて私のフォロワーシップスタイルを一言で言うなら、「貢献性を顧みない、結果オーライの突出した提言力」といえるのではないかと思っています。私は常に自分が正しいと思ったことや、こうした方がうまく行くと考えたことを、上司に強く提言する一方、上司がら言われたこと、求めていることに従うのが苦手で興味がない、そんな部下だったと思っています。そんな自分が会社の中で一定の評価を得ることができたのも、自分自身の提言力に偏った言動や振る舞いが、結果としてチームの成果に大きく貢献してきたからではないかと自負しています。まさにこの段階で、フォロワーシップという言葉の定義からは大きく逸脱していると言えるでしょう。ここで私の部下としてのフォロワーシップが功を奏した過去の経験を皆さんに紹介させて頂きたいと思います。あれは私が業務用(飲食店担当)のマネージャーとして、現場最前線の営業部隊を率いていた時のことだったと思います。当時、私が担当していた、他社のビールメーカー専売のある大手の居酒屋チェーン(20数店舗)がありました。あるとき私は、その居酒屋チェーンへの売り込みを目的として、当時私の直属の上司あった支店長と、その居酒屋チェーンの社長との会食をセッティングしました。その場は大いに盛り上がり、たまたま同じ年であったことから二人は意気投合し、その後もお互いにしょっちゅう食事に誘い合い、仕事的にも個人的にも非常に仲の良い良好な関係性が築かれたのです。その後二人の関係はより綿密なものとなり、あるとき支店長はその居酒屋チェーンの社長から「自分の経営する全店舗で扱うビール銘柄を全てサントリー切り替えてもいい」という話を引き出すことに成功したのです。それは、よくよく話を聞いてみると、私の上司であったその支店長は、ビール銘柄の全面切り替えの見返りとして、〇千万円という直接融資(資金を直接に融資すること)を約束したのです。その内容については、直接の担当マネージャーである私の意見を聞かずに、支店長の独断で意思決定されたものでした。この支店長独断での意思決定に対し、私はすぐさま真っ向から反対意見を述べました。なぜならその大手居酒屋チェーンの経営内容は債務超過の状態に近く、資金繰りに困っていて、いつ倒産してもおかしくない状態だったからです。もし我社がその会社に対して、ビール銘柄の全面切り替えを条件に、〇千万円の直接融資を行ったとしても、その会社が倒産してしまえば、その融資金額は返還されることはなく、全額無駄なものとなってしまうからです。そんな私の確固たる反対提言に対して支店長は、「なんでや、おまえは上司である私の言うことが聞けないのか。あの会社は決してつぶれることはない、まだまだ余力があるので今回の話は絶好のチャンスだ」と頑として自分の主張を譲ろうとはしませんでした。以降、この件で毎日毎日、支店長との激しいやり取りが続きましたが、私が何度説得しても聞き入れてはくれなかったので、私はいたたまれず、支店長を説得するために、その飲食店チェーンの内部事情を良く知ってる酒販店や金融機関へ内緒で連れて行き、いかにこの飲食店チェーンが倒産の可能性が高いかを、彼らから支店長に話してもらいました。

このような、私の粘り強く執拗な説得に、支店長もようやく折れてギリギリのところで直接融資をとりやめ、当社のビールへの切り替えに対する専売料(期間販売に対する契約金)という形で、当初の直接融資金額の半額の支払に切り替えることに成功したのです。その契約は、たとえその会社が倒産したとしても、引き続きその存続会社が引き続きサントリーのビールを継続販売し、その契約数量が販売し終わるまで販売し続けるという一文を契約書に組み込みました。一般的に考えてみれば、たとえどのような理不尽な内容であっても、上司の意思決定に真っ向から逆らうということは、サラリーマンにとってはかなりリスクが高いと言わざるを得ません。たとえ自分が正しかったとしても、人事権は上司にあるため、上司の意向を覆して、自分の意見を押し通すというのは相当な自信と勇気が必要になります。いま振り返ってみても、なぜ私にあのようなことができたのかはわかりませんが、とにかく会社(支店)に大きなダメージを与えたくないという一心で、知らず知らずのうちにあのような暴挙にででいたのです。前段で「提言力」の話をしましたが、まさにこの一件は「提言力」という言葉では言い表せないエネルギーが必要だつたと思っています。さて、その後、その居酒屋チェーンはどうなったと思いますか?

直接融資の取りやめを決めてから3ヶ月後、その居酒屋チェーン倒産しました。それも単なる倒産ではなく、借金を反故にするための計画倒産の様相が強いものでした。私と支店長はすぐさまその居酒屋チェーンの社長のところに行って、倒産後、全店舗の経営を引き継ぐ受け皿となった存続会社(これもその社長が実質的に経営する別の会社)に引き続きサントリーのビールを契約数量まで販売してほしい旨の交渉をしました。そこでは幸運なことに、支店長が以前から培っていたその社長との密接な関係性により、存続会社がサントリーとの契約数量まで責任を持ってビールを完売頂くことを確約頂き、その後契約数量に達するまでには数年かかりましたが、結果的には専売料(契約金)に見合った販売実績を確保することができたのでした。「もし、あの時に直接融資の実行を私がそのまま見逃していたら・・・・」と思うと今でもゾットします。このような話からも、リーダーを支えるフォロワーは、ただ上司の指示に従ってのみ仕事を進めるだけではなく、その上司やチームのために最善の提言をし、それを実行してもらう勇気と強い意志が必要になるのです。

しかし、この話を「単なる部下の勇気と強い意志が上司の意思決定を覆した」という話では終わらせてはいけないと思っています。それは別の観点から考えると、私個人だけのの問題ではなく、もっと別の次元の問題、つまり組織やチームの「心理的安全性」の問題だと考えなければないからです。組織における心理的安全性は、メンバーが安心して自分の意見やアイデアを提言できる環境を意味しており、心理的安全性が確保されている職場では、社員がミスを恐れずに発言し、建設的なフィードバックを共有できます。これにより、イノベーションや創造的な解決策が生まれ、チーム全体の生産性が向上します。また、心理的安全性が高い組織においては、個々のメンバーが自分らしく働けるため、エンゲージメント満足度が高まり、社員の離職率の低下やモチベーションの向上につながります。リーダーがこの心理的安全性を積極的に育むことにより、組織全体のパフォーマンスが向上するだけでなく、健全な組織文化が形成され、長期的な成功を支える基盤が築かれるのです。

また心理的安全性は別の側面から企業の命運を決める重要な要素をはらんでいることを忘れてはなりません。心理的安全性が高い職場では、従業員が自分の意見を自由に述べ、遠慮なく問題を指摘できるため、不正リスクの防止に効果的です。このような環境では、上司や同僚からの報復を恐れずに早期に問題を報告できるため、不正が大きくなる前に対処することが可能になります。往々にして、不祥事を起こしてしまった企業に共通していることは、「法令に違反する悪いことだとは思っていたが、なかなか言い出すことはできなかった」とモノいえぬ雰囲気の空気にさらされていたことが明らかになっています。業務の透明性が向上し、プロセスが明確になることで、不正行為が発覚しやすくなり、従業員は自身の行動が組織全体に与える影響を理解し、不正を行うことへの心理的障壁が高まります。最終的に、心理的安全性が確保された職場では、業績への過度なプレッシャーが軽減され、不正行為に頼らず、健全な方法で問題を解決できる土壌が作られます。

話はまた元に戻りますが、このようにメンバーのフォロワーシップにおける「提言力」の発揮にあたっては、その周りを取り囲む会社や組織・チームの心理的安全性が担保されているかどうかが問われることになります。いくらメンバーが勇気を振り絞って上司に提言しようと思ったとしても、モノ言えぬ雰囲気や、提言を全く受け入れない組織においては、決して誰も自分に不利になる提言は行われないということです。ここで「ものいえる自由闊達な組織風土」が重要になってきますが、それはまさにサントリーが目指す組織文化を示しており、社員が自由に意見を言い合える環境を大切にし、社員が安心して新しいアイデアや意見を発信できる場を提供し、企業全体の成長やイノベーションを促進することを目指しています。いま思うと、私が一貫して、遠慮なく言いたいことをずけずけと言ってこられたのも、その根底には、「多少耳の痛い話でもしっかりと他の意見を否定せずに受け入れる」という自由闊達な組織風土の中にいられたことが大きく影響していると思っています・

サントリーは「やってみなはれ」という創業以来の精神を大切にし、失敗を恐れずに挑戦する文化を育むことで、自由闊達なコミュニケーションと積極的な行動を促し、社員が自己成長を続けることを支援しています。このような風土は、サントリーが持続的に新しい価値を創造し続けるための基盤であり、社員の主体性を引き出し、個々の成長と企業の成功を両立させるものです。これも過去に(そして今でも)しばしば社内に見られた光景ですが、経営のトップであるオーナー一族に物申した役員が、一見左遷されたように映る部署に異動させられた後に、また昇進を果たして新たな活躍の場を与えられているケースを私は何度も見てきました。これは「ものいえる自由闊達な組織風土」を表す最たる事例だと思っています。今後、私が担当する「フォロワーシップ講座」においても、サントリーは、このような「提言力」を遺憾なく発揮できる会社であり、そのような環境下で、当たり障りなく上から言われたことだけを着実にこなしていく「貢献性だけのイエスマンには絶対にならないよう」引き続き後輩たちにその真意を伝えていきたいと考えています。

※このブログを読んで、「もっとフォロワーシップについて知りたい」と思われる方は、ビジネスコーチ社が主宰するセミナーへのお申し込みを宜しくお願いします。 

~ リーダー受難の時代を乗り切る最後の切り札 ~

「フォロワーシップの本質について考える」

2024年11月14日(木)13:00 ~ 15:00
2024年12月10日(火)15:00 ~ 17:00

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神田 和明

神田 和明

結果の出る強い組織づくりコンサルタント

株式会社チームフォース代表
中小企業の経営者に、コンサルティングとコーチングのハイブリッド型ソリューションで「結果の出る強い組織づくり」のサポートを行い、「活力」と「成果」をお届けしています
中小企業診断士/【BCS認定】プロフエッショナルビジネスコーチ/宅地建物取引士

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