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「やってみなはれの極意⑦」~「社風」とはいわゆるトップを映す鏡~
みなさん、こんにちは。(株)チームフォース代表の神田です。
すっかり暖かくなり、夏の気配さえ感じられるすがすがしい季節に入ってきました。今回は企業における「組織風土」について考えてみたいと思います。「組織風土」とは何か、「組織風土」がもたらす影響、そしてより良き「組織風土」を実現するためのポイントとは何か?について、サントリーで働かせて頂いている私自身の経験も踏まえながら、思いつくままに書かせて頂きます。
昨今、「組織風土」に対する企業の関心度が高まっています。組織における働きやすさや職場の人間関係の良さが従業員の離職率や不正の発生率と大きな相間関係があり、また生産性の向上にも大きく影響するという調査結果などから、その重要性がクローズアップされています。風土とは、土地や地域が固有の特徴として持っている気候や地形から生まれる土壌であり、「枯れた土地には良い作物が育たない」のと同様、「悪しき組織風土の下では、人は自身の能力をうまく発揮できない」のです。
サントリーの組織風土の根底に脈々と流れているものは「やってみなはれ」の精神であることは広く知られています。そして従業員の「やってみなはれ」を最大限に発揮できる基盤となるのが、自由闊達な仲間とのコミュニケーションです。サントリーでは柔軟な働き方を推進するとともに、イノベーションの源泉となる“ワイガヤ”な組織風土を最も大切にしています。
お酒の会社でもあることから、昔より社員同士の「飲みニュケーション」が盛んで、何かにつけ職場の仲間や、お得意先との仕事の打ち上げなど飲み会の場が多く、その中での良質な本音のコミュニケーションのやり取りを通じて、相互理解や価値観の共有化が図られています。その裏付けとして機能しているのは、責任者の判断で臨機応変に使える「飲食費」の存在は欠かせません。自分の同期入社でのちに退職した何人かの仲間たちも、「今思えば、やはりサントリーの自由闊達でワイガヤの雰囲気は、飲み代を自由に経費で落とせることにあった」と異口同音に語っています。
そして今でも、仲間とのコミュニケーションを闊達にする工夫が全社として色々な取り組みが行われています。社内ビアガーデンや本格的なBar体験イベント、全国の拠点単位で行われる大規模なソフトバレー大会、新商品説明・体験会など、さまざまな社員同士の交流イベントを開催し、人が集まり交流できる場を設定することで、部署や年代を超えた新しい関係の拡がりを創出しています。ここではサントリーならではの、出社時のFace to Faceのコミュニケーションを促進するきっかけとして、必ず“雑談”と“笑顔”が生まれる画期的な法人向け自販機サービス「社長のおごり自販機」についてご紹介させて頂きます。
この施策はコロナ禍も3年目を迎え、テレワークが常態化してきた一方、デメリットとしてコミュニケーション不足が顕著になっているタイミングで導入されました。「社長のおごり自販機」は、オフィス内で社員同士のコミュニケーションを活性化するために導入されている特別な自動販売機です。この自販機の使い方は、以下の通りです
1.2人の社員が社員証を持って自動販売機に向かいます。
2.欲しい商品を選びます。
3.商品が決まったら、両方の社員が同時に社員証を自動販売機のセンサーにタッチします。
4..10秒以内に商品ボタンを押すと、両者とも無料で飲み物を受け取ることができます。
このシステムの名前である「おごり」は、導入企業が飲料代を負担することに由来しています。社員同士のつながりを重視する企業が増加しており、この自販機はその一環として導入されているようです。この試みは、心理的な観点から考案されました。「社長のおごり自販機」は、2人で一緒に自販機に向かう際も、社員証を同時にタッチする際も、位置関係としては「ヨコ並び」で、「正面同士」では、圧迫感を感じて、相手の一挙手一投足に敏感になり、緊張感が生まれやすいのですが、「ヨコ並び」の位置関係では、距離が適度にひらき、視界が開け圧迫されず、リラックスしやすい効果があります。これも雑談が生まれやすくなっている要因のひとつと考えられます。サントリーではこのように常に社員同士のコミュニケーションを促す「おもろい」取り組みがどんどん生まれています。
組織風土がその組織に及ぼす影響については、大きく以下の3つが挙げられます。
1.モチベーションと行動に対する影響: 組織風土は、従業員のモチベーションや行動に直接的または間接的に大きな影響を与えます。良い組織風土は従業員のエンゲージメントを高め、生産性を向上させる一助となります。
2.企業のパフォーマンスへの影響: 研究によれば、組織風土は企業の売上や利益に影響を及ぼすことが明らかになっています。従業員の心理的状態がモチベーションや態度に反映され、最終的に企業のパフォーマンスにつながります。
3.従業員の定着率への影響: 良好な組織風土は従業員の定着率を高めます。従業員が組織の目指す方向性やビジョンを理解し、それに沿った行動を取れるようになることで、組織への帰属意識が高まります。
このように「組織風土」の重要性が大きくクローズアップされ、多くのトップが自らがその改革の重要性を叫んでいるにもかかわらず、なかなか各企業の「組織風土改革」かうまく進んでいないのはなぜでしょうか?それは「組織風土」そのものが外からは目に見えにくいものだからです。仮に目に見えたとしても、それを見る人の観点や価値観、ものの見方によって変わってくるため、第三者からみた客観的な真の「組織風土」のありのままの姿は見えないというのが実情ではないでしょうか?
組織のコンディションを把握する手法の一つとして、「従業員意識調査」や「エンゲージメント調査」といった企業で働く従業員に対するアンケート調査がありますが、実際にこの従業員意識調査を実施してみると、各企業企業で一定の「社風」に根差した傾向値はみられるものの、その下部組織においては、異なった組織風土を形成していることが分かります。つまり「社風」という総論の雰囲気を共有しつつも、各組織においては、それぞれ異なった各論としての「組織風土」を有しているといえます。
私自身もサントリーの社内で色々な立場で数々の部署に身を置いてきましたが、前述したように同じ会社内においても、10部署10様の組織風土が形成されているのを強く感じていました。なんとなく言われたことしかやらない風土、目標に向かってメンバーがやる気に満ち溢れている風土、積極的に新しい発想やアイディアを生みだそうとしている風土、すっかり自信を失って、やる気をなくしている風土・・・・などなど。
お手本となる素晴らしい組織風土として私がすぐに思い起こされるのは、私が入社してから2部署目になる、サントリー新宿支店が真っ先に挙げられると思います。私は当時西新宿に事務所を構えていた「新宿支店」へ異動となりました。当時の新宿支店は銀座支店と並ぶサントリーの飲食店営業の花形部署で、そこに集うセールスは若くて知力と体力に満ちあふれ、馬力のある超優秀なセールスの集まりでした。
各担当セールスはそれぞれの目標数字に向かって全力で頭と体をフル回転させていました。そこには支店としての全体目標を共有化しつつも、それぞれお互いにライバル心を持ちながら独自の営業スタイルで、持てる力を存分に発揮し合っていました。支店の目標に向かって皆で盛り上げていこうという「目的意識」、そして会社の花形部署で会社の看板を背負っているという誇りとプライド、そして全員みなライバルと認識することからくる「競争意識」、そして最後に同じ苦しみや喜びを共に分かち合う同志としての「仲間意識」の3つが強く機能・作用していたように考えています。
しかしさらに深く考えてみると、そのような良き「組織風土」を底支えしていたのは、当時最年少でこの新宿支店の支店長に抜擢された支店長の存在が大きかったと思っています。彼は若干37歳という若さでこの重要な部署の支店長として、私と一緒にこの部署に配属されていました。ですから私としては、この新宿支店が以前からこのようなより良い組織風土であったかどうかは分からずに仕事をしていたのですが、のちに同僚の先輩からた聞いた話によると、かつてからこのような組織風土ではあったものの、その新支店長が赴任してからさらにその組織風土は更により高いレベルへと向上したとのことでした。
そのような良き組織風土が浸透するにつれ、支店の実績も毎月毎月予算を達成し続け、その連続記録を更新し続けました。新支店長のキャラクターも、明るく気さくで話しやすく、いつもメンバーに励ましの言葉をかけていたと記憶しています。私がいま考えても、私が仕えた上司の中ではダントツに一番素晴らしく尊敬できる上司であったと思っています。
一方でそれとは真逆の組織が存在したのも事実でした。この部署は全国に展開する大手小売りチェーンの本部担当の部署で、当時は40,000店の店舗で販売されるサントリーの酒類の全売上を担当していました。この部署は前述した新宿支店とは異なり、組織としては崩壊寸前の危機にあったと記憶しています。なぜなら各メンバーの仕事に対する意欲は著しく下がっており、何としてでも売上を達成しようという意識や執着心を完全に失っていたからです。
そのような状況下にもかかわらず、メンバー同士は仲が良く、人間関係はいたって良好でした。敢えて言わせてもらえるなら、目標に対する執着心が弱く、その達成をはじめから諦めている仲良し軍団で、いわば完全な「負け犬集団」といえる状態でした。これはこの組織のメンバーだけの責任ではなく、小規模店舗×多展開のFCビジネスというほかの販売チャネルとは異なった特殊な業態にサントリーとして充分なマーチャンタイジング戦略を取れなかったことが大きな要因だったからです。
その後のこのチームの組織風土の飛躍的な改善とその躍進ぶりについては、ここでは詳しく触れませんが、同じサントリーの花形部署でもこのように組織の雰囲気が全く違ってくるということだと考えます。このように、組織風土は同じ企業風土の下部組織であっても、その組織の置かれた状況によって全く異なるものになるということがご理解いただけたと思います。それではこの二つの部署を仕事を通じて私が経験し考える、「組織風土を決定する要因」を私独自の考えて以下に披露したいと思います。
結論から先に言えば、より良き組織風土醸成の最大のキーマンはやはり組織のリーダーの存在によるところが大きいということです。おそらく7割方、組織のリーダーの考え方や言動によって組織風土は形作られると考えます。リーダーとはその組織を指揮するトップという位置づけであり、企業であれば社長、事業であれば事業部長、部であれば部長、課であれば課長ということになりますが、あくまでそのリーダーが「その組織の指揮・運営をある程度任されている」ということが前提になります。課長といっても実質は部長の完全な統制下にあったり、事業部長といっても社長直轄的な形になってその影響力を行使していれば、実質のリーダーは変わってきます。
そしてリーダーのより良き組織風土醸成に関する役割として一番重要なのは、その組織の「ミッション・ビジョン・バリュー」を明示し、それを全メンバーに浸透させることができているかどうかにかかっています。組織で働くメンバーにしてみれば、ただ単に収入を得るための手段としての仕事という位置づけではなく、その組織が何のために存在しているのか(ミッション)、そしてそれを実現するために何を目指すのか(ビジョン)、そしてそれを達成するためにどんな判断を持って意思決定し行動するのか(バリュー)が明確に原落ちしない限り、意欲を持ってその組織の発展のために働こうというモチベーションは生まれてきません。
次に重要なのは「関係の質」の向上による成果です。「関係の質」という概念はMIT(マサチューセッツ工科大学)の元教授であるダニエル・キム氏が提唱した組織の成功循環モデルに基づいています。このモデルは、組織の成果を上げるために関係性の質を高めることが重要であるということを強調しています。組織の成功を促進するために以下の4つの質が重要です。
①関係の質(組織内の関係の良さ): チームメンバー同士の信頼やコミュニケーションの質が高いことが求められます。良好な関係性は、アイデアの共有や協力を促進し、組織全体の成果に寄与します。
②思考の質(良いアイデアが生まれる土壌): 関係性が良好であれば、新しいアイデアや創造的な解決策が生まれやすくなります。メンバー同士の信頼とオープンなコミュニケーションが、良いアイデアの発展につながります。
③行動の質(挑戦や助け合い): 良好な関係性と良いアイデアがあっても、実際の行動が伴わなければ成果は出ません。チームメンバーはお互いをサポートし、共通の目標に向かって行動する必要があります。
➃結果の質(成果が出ている度合い): 最終的な成果は、関係性、アイデア、行動の質によって決まります。良好な関係性と良いアイデアが良い行動につながり、結果として成功をもたらします。
組織の成功循環モデルにおけるグットドサイクルとは、組織を構成するメンバー相互の「関係の質」をまず高めることから始めるアプローチです。「関係の質」を高めるためには、メンバーの相互理解や相互尊重を深めたり、一緒に考えること、すなわちコミュニケーションを促進します。そうすると、気づきを得たり面白さを感じることができ、「思考の質」が向上して、自発的・積極的に行動するようになり、「行動の質」が向上。その結果、「結果の質」が高まって、「関係の質」がさらに向上するというように、プラスの循環が続いていくのです。
一方のバッドサイクルは、結果を追い求め、目先の業績を向上させようとするところから始まります。そうしたやり方には無理があるので、強制力や指示命令の行使、やらされ感の高まりによって「関係の質」が低下します。「関係の質」の低下は、「思考の質」と「行動の質」の低下につながります。自発的・積極的に行動しなくなるので、成果が上がらず、「結果の質」の低下、職場のさまざまな問題の発生というマイナスの循環にはまり込んでしまうのです。
ではこの「関係の質」を高めるためには具体的にどのような取組が必要なのでしょうか?私自身もこの「関係の質」についてはビジネスコーチングを学んだことを通じて、私が指揮したチームで相当数の小さな実験を重ねてきました。これも前述した屈著にて紹介させて頂いていますが、ここで改めてて皆さんにご紹介させて頂きたいと思いますので、ご参考頂ければ嬉しいです。その内容は大きく分けると3つに大別されます。
1.組織の「目指す方向性」の明確化とその浸透
2.メンバー同士の価値観の共有化により相互理解を深める
3.チーム内のコミュニケーションを活発化させる場づくり
この3つには順番があって、経験上、1.→2.→3.という順番で進めていかなければ充分な効果が得られないと私は考えています。なぜなら、1.でまず組織の目指す方向を統一しなれれば、チームとしての一体感が保てないからです。これがなければいくら2.3にて人間関係を強めたところで、まとまりのない単なる仲良し集団に陥ってしまうからです。そして3.のコミュニケーションを活性化させるためには、まず2.の各メンバー同士がお互いに「どんな人間なのか」ということを共有化しなければ、コミュニケーション施策が効果をなかなか発揮できないと考えています。いわゆる2.は3.を行う上での前技と言えると思います。
そして最後に重要なのは、組織における「心理的安全性」です。心理的安全性は、チーム内で安心して意見交換ができる状態を示す概念です。具体的には、どのような言動をとっても拒絶されない状態であり、人間関係の悪化を招かない安心感が共有されていることを意味します。単に仲良しチームを作るものではなく、チームが目的達成のために安心して活発に意見交換ができる状態を指します。これは前述した「関係の質」と密接な関係にあり、関係の質は心理的安全性の必要条件といえます。
以上をまとめると、「よりよき組織風土の醸成」に向けて、第一に組織を預かるリーダーが自ら発する「ミッション・ビジョン・バリュー」を浸透させること、次に組織のメンバー同士の「関係の質」の向上によって正しいプロセスの下で成果を出すこと、そして最後に組織における「心理的安全性」を担保すること、この3つが重要なファクターになってきます。
冒頭でお話しした通り、サントリーの組織風土の根底に脈々と流れているものは「やってみなはれ」の精神であるとのお話をさせて頂きましたが、このサントリーならではの「やってみなはれ精神」の重要性を一番強く感じているのはやはりグループのトップであるということです。トップ自らがこのより良き「やってみなはれ」の実践を自ら手本として示し、言葉だけではなく自らの行動で「やってみなはれ」を発信し実践し続けてきたのです。
「企業はそのトップの器以上に大きくはならない」と同じように「社風はそのトップの人間のあり方以上には良くならない」ということだと思います。これはサントリーが同族企業ゆえにその企業理念が親から子、子から孫、孫からひ孫へと脈々とその精神が血流としてうまく組織風土に反映され引き継がれていることを意味しています。現在の5代目社長の新浪氏は同族ではありませんが、この組織風土の重要性をより深く理解し、そのサントリーらしさの価値の伝承に力を注ぐとともに、現在その社風をグローバルに展開すべく懸命に取り組まれています。このトップダウンによる強い社風への思いがサントリーの組織風土を支える大きな柱となっていることは間違いありません。このことを如実に示す佐治信忠会長の言葉を紹介して結びとさせて頂きます。
「企業というのは、放っておけば自然と悪しき官僚主義に傾いていきがちです。だから、絶えずチャレンジする風土や、それを促す仕組みを意識的に作っていかなければならない。」
皆さまもいちど時間をつくって、この社風や組織風土について、トップおよび上司やメンバーとひざ詰めの議論をされてみてはいかがでしょうか?

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